下肢静脈瘤とは
足の静脈が太く膨れ蛇行した状態を「下肢静脈瘤」といいます。
●症状としては
足のむくみ、だるさ、重さ、痛み、ほてりなどで、ひどくなると皮膚色素沈着や潰瘍形成、静脈炎を合併することがあります。
●静脈瘤の原因は
人間の体には「動脈」と「静脈」という血管があります。
心臓から出た血液は「動脈」を通ってからだの隅々に流れて行き、細胞に酸素を与え、二酸化炭素を受け取って静脈を流れ再び心臓へと戻ります。
足の静脈には、深いところを走る「深部静脈」と浅いところを走る「表在静脈」(大伏在静脈、小伏在静脈)があります。また、表在静脈と深部静脈は「交通枝」という短い血管でつながれています。
表在静脈の血液が太い深部静脈へ合流し心臓へと血液が流れるのですが、静脈には一方通行の「弁」があり血液の逆流がおこらない様になっています。
この「弁」が壊れると(弁不全)、血液の逆流がおこり、立った時に重力に伴って血液がヒザより下に溜まり、その結果、静脈が膨れ、静脈瘤となるのです。
下肢静脈瘤の最新治療
静脈血管内レーザー治療
静脈瘤に対して新しく血管内レーザー治療が保険適応になりました。
当院でも、この最新治療を導入しました。
これは逆流している静脈内に光ファイバーを通して、静脈の内側からレーザーを直接照射して静脈を閉塞させてしまう治療です。
従来のストリッピング手術とほぼ同じ効果が得られます。
局所麻酔で行えるので、体の負担も少なく、日帰り手術が可能です。また、手術の傷が目立たなくなりました。
静脈瘤の治療の方法
弾性ストッキングを着用し、静脈のうっ滞を一時的に防いで症状を和らげる方法もありますが、この方法では静脈瘤は治りません。
治療としては、基本的に手術か静脈瘤硬化療法しかありません。
治療法 | 特徴 |
---|---|
静脈血管内レーザー治療 あるいはストリッピング(従来型) | 逆流している表在静脈をレーザーで閉塞させるか、摘出します。 5年後の再発率は5%以下です。 |
表在静脈高位結紮+硬化療法 | 局所麻酔にて表在静脈の適切な場所を糸でしばって逆流を止める方法です。軽度の静脈瘤に行います。 日帰り手術で次の日から仕事や日常生活が可能です。 しかし、これだけでは静脈瘤が無くならない場合がありますので、残った静脈瘤は、後日、硬化剤を注入してつぶす治療を加えます。(一般に注入できる薬の量が決まっていますので硬化療法を何度か繰り返して行うこともあります。)5年後の再発率は20%程度です。 |
硬化療法のみ | 表在静脈の弁不全による血液の逆流は止められないので、5年後の再発率が50%程度と高率です。 このため当院では行っておりません。 |
Q&A
静脈瘤について、よくある質問にお答えいたします。
- レーザー治療の対象となる方は?
- 大伏在静脈または小伏在静脈の弁がこわれて、逆流がある場合です。
超音波診断装置(静脈エコー)等にて逆流状態を検査し、さらに症状等を加味した上で医師により判断されます。
- 保険診療は受けられますか?
- はい。
ELVeSレーザーによる下肢静脈治療は平成23年1月より健康保険による診療が認められるようになりました。
3割負担の方で自己負担額で約4万6千円です。
- 安全ですか?
- 安全な治療です。
また、保険治療を行うにあたり厚生労働省より治療を行う医師にはレーザー機器の取り扱いとレーザー治療の講習が義務づけられています。
当院の医師もこの講習を受けて認定されています。
- 日常生活はどうなりますか?仕事はできますか?
- 家事や家庭内のことは手術当日からできます。
事務系の仕事は翌日から復帰することができますが、激しい肉体労働や長時間の立ち仕事の方は2~3日後から復帰されることをお勧めしています。
- 静脈をふさいでしまって大丈夫ですか?
- 大丈夫です。
足の表面の静脈をふさいでも血液は他の細い血管を通り、足の深い所の血管に流れ込み心臓へと流れます。
Dr.のひとこと
最新の静脈瘤治療を導入しています。
当院での下肢静脈瘤治療は名古屋大学血管外科と同じ治療方針で行っており、 血管エコーを用いて静脈瘤の原因となる場所を的確に判断し最適な治療を行います。
足の静脈瘤や逆流している静脈を止めても血液は本来流れる深部静脈へ流れるので身体への影響はありません。
血管内レーザー治療には手術適応がありますので、検査後に相談いたしましょう。